音楽の聴き方が変わった時の話

珍しく音楽の話題でも書きます。
現在荒んでいるためささみからすさみに変わっています。内容はすさみじゃないと思う。




音楽をはじめたのはいつか、というと……

楽器を弾く部活に入ったのは高校生だけど、本格的に楽器に没頭したのは大学生だけど、どちらも音楽をしてたというよりは楽器を弾くことに夢中になってたに過ぎませんでした。
聴くのは音楽の授業とか、ポップスはじめ色々と聴いたりとかしてたけど、それもまた特に音楽を聴いていたわけではないと、今は思っています。聞き流していたことも多かったしね。


今から振り返ってみて、音楽と出会ったのはたぶん、プロの指導を受けてから。音楽を共につくっていく経験をしてからでした。大学生半ばごろのことです。(プロの指導のもと合奏をつくっていく経験とはいいつつ、短期間だし、結果は散々なものだったけれど笑)


その時の衝撃は今でも印象に残っています。


わたしは主旋律を担当していた。ようはメロディ、お歌担当です。
譜面を追い、音価通りに、強弱記号を見ながらただ音を並べることで精一杯だったし、それ以上どうこうなんてあまり頭になかった。まあ気にしていたのは楽器の性質上難しいレガートな奏法とか、いかに大きな音を出すかとか、ミスなく速弾きもこなすかとか、他の人と合わせるか、指揮をよく見るとか、そんなんばっかり。


でも、違った。

そんなのは序の口に過ぎなかったし、努力の方向を誤っていた。


まず楽譜を見たとき、頭の中で音を鳴らす。イメージする。どんな音楽か考える。
それから楽器を手にとって、鳴らす音をそのイメージに近づけてゆく。練習とはそういう作業なのだと知った。


たとえば……
f(フォルテ)は強くという意味で、クレッシェンドはだんだん大きく。p(ピアノ)は弱くで、デクレッシェンドはだんだん小さく。
それは音楽の授業で習った。



けれど、譜面と対峙した時、強弱記号ひとつとっても意味はより豊かに捉えることができる。

ここのfは元気な明るいf、和音も単純で、リズミカルで楽しげなところ。だからはっきりと少しスタッカートぎみに弾こう。実際の音量に拘るよりすこし前のめりなリズムの取り方をして元気に感じさせよう。今にも駆け出したいようなリズム。

こっちのfはもっと深刻さのあるf。悲劇的なシーンのよう。和音も不安定な響き。リズムより和声的な表現を優先したいから、各パート自分の弾いてる音と周りの音をよく聴き合って、バランスをとる。バランスといっても、きれいに響くようにするんではなくて、思いっきり濁らせる、ぶつける。不安定さを前面に出す。そうすれば、次の小節で解決され安定した響きがより際立つ。不安定から安定に解決するのに伴い、強弱も自然に強から弱へと変わる。体重移動するように、ごく自然に。音色をやさしく変えてゆくのも良し、不安定さを強調するように、前の音はすこしだけ長くとるのもよし。

リズムひとつとっても、引きずるようなリズム、前のめりなリズム、踊りだしたくなるような一定した軽快なリズム……それらを実現するために、強拍を強め長めにとったり、あるいはタイミングを少し早めにとったり、遅くとったり、メトロノームのように無機質ぴったりにとったり。



その上、これは枝葉末節にすぎなくて、指揮者には曲の全体像が見えているのだった。起承転結をつくるように、曲全体の流れをつくる。前後のつながりや、断絶、メリハリ、緊張感……それらを監督してくれた。



わたしには、技術が圧倒的に足りなかった。
表現したいものがこんなに見えた。共有してもらえた、求めてもらえたのに、それに応えるだけの技術がない。たんに、弾けない。思うように音が出せない。

悔しくて、悔しくてしかたなかった。
示された向かう先の目標が魅力的だったから余計に、悔しかった。



しかもわたしは主旋律担当。皆が和声やリズムを作ってくれる上にのって、流れをつくる。音符が多いのもあるけれど、要求されることは多く技術的にも難しい。

最後の仕上げ、ショートケーキのイチゴみたいなのかな。スポンジの間に入って全体にも影響するし、見た目の一番目立つところを飾る。




この合奏をきっかけにして、わたしの耳は少しずつ変わっていった。
曲を聴くとき、音を聴くとき、音楽的な要素も聴きとるようになった。
まだまだ不完全だし、音程もきちんととれないし、リズムや和声の感覚だってまだ曖昧だけれど、聴いてわかることがとてもとても増えたのだった。

聴音といって、聴いてなんの音か当てるくらいのことができたらいっそう世界がひらけるんだろうな。





ここからは余談だけれど、実は、これによって良いことだけでなくて弊害というのか、イライラすることも出てきた。

音程のずれ、調和してほしいところで濁ってる、リズムがめちゃくちゃ、流れやゆれが全くない音楽にひどく不満を感じるようになった。(流れやゆれがないってのはそういうものだとも捉えられるけれど、今のところは異質に感じちゃう)
たとえばそこらの歌番組とか、アマチュアでやってる諸々とか、身近なところだと防災無線から流れてくる音楽。スーパーの打ち込み音の無機質なBGM。

ものによるけれど、聴いてしまうと違和感を覚える。もっとこう……ちがうよう……ああああああちがうのおお………ってなる。

それが今みたいに荒んでるとめっちゃイライラしてきいていられない(笑)思わぬ弊害です。



(とはいえわたしの耳も不完全で中途半端だから、批評だの文句だのつけようにも自信がないです。でも、コンクールとかの採点が自分の評価と一致してるとちょっと嬉しい……笑)

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