満月の下反省会

かつては毎月満月の日、もしくは満月に近い晴れた日に、月を見上げながら考え事をする習慣があった。自分の中ではそれを満月の下反省会と呼んでいた。

帰ってきて、屋根の下に行く前に空を見上げる。都会の夜だからか、満月だからか星はあまり見えない。ただまぁるい満月を前にここ28日間のことを振り返る。


最近は生活が乱れてしまっているな、ちゃんとしなきゃ。自分の心に正直でいられているかな。まっすぐ前を見つめられているかな。
これからはどう過ごそう。踏み出せなかった一歩を踏み出そうか。例えば、あの人に会いに行くとか。あれに応募してみるとか。あれを勉強してみようかな、がっつりとね。

そうして反省と抱負を自室に持って帰るのだった。

どんなに忙しくても、悲しくても、はしゃいでいても、月に一度この時間があったことは今思うと得難い習慣だったに違いない。後悔していないか、この道で合っているか、停滞していないかと意識的に自分に問うことで人生のクオリティコントロールをしていた。


いつのまにかそんなことを忘れていった。忙しくて、つらくて、ダメになっていくうちに夜空を見上げる余裕なんてなくなってしまったのだった。

休養しながら過ごす今になってようやく再び月を見上げながら思うところが出てきた。ああ、久しぶりになってしまった。
いまはどうしていますか。得たものと失ったものはなんですか。どうやって生きてゆきたいですか、それはかつての生き方と同じですか。それとも違ってきましたか。

たぶん、時間にしたら5分に満たないその反省会はやはり私の中に一定の納得感をもたらしてくれる。答えがないならないで構わない。探せばいいから。

冷静な自分と会話しながら(こういうのは自問自答というのかな)生きてゆくことにまた現実感を与えたい。


かつての私は、100年後に何を為してきたか胸を張って答えられるような生き方をしたいと言っていた。
いまは……まだ下描きすらできていないけれど、少し違う生き方を思い描きたいのだと思う。

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